タージマハル(インド)
 1993年11月、ぼくはタージマハルの前庭に座ってスケッチをしていました。いろんなインド人がやって来て、スケッチを見ながらいろんなことを言うのにもそろそろ慣れたころ、二人組のオヤジがやってきて煙草をねだられました。道行く人に煙草をねだるのは日本以外ではご挨拶なので、こころよく貴重なセブンスターを喜捨したのですが、サンキューと言って去っていったオヤジたちは、ふと気が付くとぼくの大事なジッポライターまでも持って行きやがってたのでした。慌てて追いかけましたが、当然のごとくオヤジ達は聞く耳持ちません。
 旅行先でモノをなくすとけっこう気分が落ち込むものです。ふさいだ気分を払拭すべく、その後一心不乱にスケッチに熱中していたら、知らない間に閉園時間が迫っていて、おかげでぼくはタージ・マハルの20メートル以内に5時間くらいいたけどタージ・マハルの中には入ったことがないという、変わった人になってしましました。オヤジ、オイル交換すんのわかってんのかな。

 現物がこれだけしっかりした構造を持っているものだとモデル化するのも簡単です。これまでで一番短時間で仕上がりました。でも八角形のものを四角形にまで単純化してしまうっていうのはけっこう度胸が必要です。