名作椅子ペーパーキット

 デンマークといえば家具。家具といえば椅子。というわけで、向こうで過ごす間に、僕はすっかり椅子のとりこになってしまいました。とはいっても一脚数万円から数十万円もする椅子を気軽に買うわけにはいきませんし、置き場所もありません。また、ドイツの家具メーカーVITRA社が出している有名なミニチュアコレクションは、模型とはいえ本物と全く同じ素材を使っているため、安いもので5千円、高いものになると数万円もしてしまいます。そこらの椅子なら軽く買えてしまうお値段です。それならいっそのこと紙で作ってしまえ、と思ったのがこのシリーズの始まりでした。完成品を家具好きの友人にプレゼントしたところ予想以上によろこばれ、こんなにうけるのなら、と二つ目からはできるだけ簡単な組み立て方にして、組立マニュアルを添えてペラで配り始めました(ホントは売ってました。違法です)。今のところ6点が完成しています。ちなみに、家具好きの方ならおわかりでしょうが、写真の2点はいずれもデンマークの椅子ではありませんので念のため。

 こんなものに興味を持つのはデンマーク人と一部の物好きだけだろう、と思って帰国しましたが、予想外にも日本では、世界中の家具がショップにならび、インテリア雑誌が巷にあふれていました。ぼくが単に無知だったわけです。
 ともあれ、椅子の研究では世界的な権威でいらっしゃる、東海大学の織田教授にコンタクトをとったところ、こころよく正確な三面図の情報を教えていただき、現在、より客観的なラインナップのし直しとスケールの統一を図り、何とか世に出したいとがんばってます。僕の愛するアーネ・ヤコブセンの作品の、セクシーともいえる曲線のラインを、いかに紙で表現するかが、このシリーズの究極の課題です。