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「デスモスチルス」、あんまり聞いたことのない名前ですよね。今から約1100万年前に絶滅してしまったほ乳類で、世界で2体しか見つかっていない全身骨格がいずれも日本から出土したこともあり、日本を代表する絶滅ほ乳類と呼ばれているそうです。標本の少なさに加え、子孫にあたる動物も現存していないため、その生態は謎だらけ。その謎がおもしろいんじゃん!ってことで、復元骨格模型を展示している、日本で唯一の地学専門の博物館「産業技術研究所・地質標本館」の依頼を受けたNDCグラフィックスさんのご指名で、最新の研究成果に基づいた全身復元ペーパークラフトを作らせてもらいました。
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などと大げさなことを書きながら・・・実物はずんぐりむっくりのけっこう地味めな動物なんですが、この姿に落ち着くまでが正に科学の歩みの歴史なのですよ。
その特徴はまずその手足の骨格。僕たちの知っているほ乳類の手足は胴体から地面に向かって垂直に伸びていますが、デスモスチルスはカエルやワニのように、いったん真横に出てから地面に向かっています。最初に全身骨格の化石が発掘された1930年代からその後1970年代にかけて再現されたモデルは、牛やサイといった現存のほ乳類をモデルとして組み立てられたため、このペーパークラフトよりはずいぶんスマートで背の高い姿をしていました。解剖学的な視点から骨そのものの特徴を整理して、それまでの生物学の常識をくつがえしたのが、今回監修をいただいた東京大学の犬塚則久先生。こんな脚の付き方をするほ乳類はこれまで知られていなかったため、1997年に発表した当時は世界中の生物学者が驚いたそうです。そんな立派な由来を持つ手足をいつものように真四角にしちゃったり紙一枚に省略しちゃうわけにもいかず・・・僕には珍しい丸っこいフォルムを再現するために、鉄腕アトムの腕以来の試行錯誤を繰り返しました。 |
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そしてもう一つの大きな特徴は、その名前「デスモス(束ねられた)スチロス(柱)」の由来となった臼歯の形。のり巻きを数本束ねたような形で、100年以上前にカリフォルニアで発掘されこの名前が付けらたそうなんですが、臼歯だけを発掘した人の中には、タコの化石だと勘違いした人もいるそうです。こちらはそこそこペーパークラフト作家に親切な形で、わりと簡単に作れましたが、臼歯のペーパークラフトは世界でも珍しいんじゃないかと思います。臼歯のペーパークラフトを作りたがる人も世界でも珍しいか・・・。
残念ながら当面市販の予定はなく、地質標本館や全国各地の博物館で開かれるワークショップの際に教材として活用されるそうです。デスモスチルス本体はハサミ不要の金型入りですがら、30分もあれば組み立てられるんじゃないかな。恐竜のペーパークラフトも派手でいいけど、この分野においては世界でも最先端の研究者の方から、生態の謎や復元の苦労話を聞きながら、ほ乳類日本代表を組み立てるのも貴重な体験ですよ。お近くで開催された際には是非ご参加ください。 |
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