でもやっぱり少しだけ・・・。
僕の記憶に強烈に残っている最初の手塚体験は、小学5年生の時に読んだ「火の鳥」です。もちろんそれまでにも手塚漫画はたくさん読んでいたのですが、当時引っ越した小学校の同級生に、ちょっと通な漫画ファンがいて、彼の部屋には朝日ソノラマ版「火の鳥」が全巻(当時)揃っていました。彼に借りて読み進めた「黎明編」「ヤマト編」「宇宙編」「鳳凰編」・・・、それぞれ独立した物語が互いに結びつき、全体を包括する大きな構造が徐々に浮かび上がってくる知的興奮、そしてその物語世界が、手塚治虫という人間一人の頭脳と1本のペンによって生み出されたという事実に、当時の僕はすっかり打ちのめされてしまいました。
以来、絵を描く職業に漠然とあこがれを抱きつつ、美術とは全く関係のない大学への進学を決めたのも、手塚治虫の著書にあった言葉が決め手になりました。うろ覚えで申し訳ないですが「僕は将来漫画家になりたいと思っています。でも親は、勉強して大学に行けと口やかましく言います。いったいどうすれば良いのでしょうか?」という少年の質問に対して、手塚治虫はこう答えます。「例えばりんごを見て、あぁこれはりんごだなと思うだけの人は、漫画家にはなれません。一つのりんごを見て、そこからいかに想像力を広げ、たくさんの物語やイメージを思い浮かべることができるか、そのためには、漫画を読むだけではなく、多くの本を読み、多くの人と会い、多くの経験をすることが大切です。環境が許すのであれば、今はできるだけ勉強をしてください。漫画家を目指すのは、その後でも決して遅くはありません。」僕は今の仕事に就く前、けっこうな寄り道をしてきてしまいましたが、10代の頃にこの言葉を信じて良かったと今では思っています。
ああ、やっぱり暑苦しいですね。ペーパークラフトを作るのにこんなゴタクは関係ありませんので、是非気軽に作ってみてください。アトムの顔と頭の切り開き方は、一番苦労した点であり、自分でも気に入っている部分です。頭と顔を組み合わせるのはけっこう難しいのですが、あせらずじっくり根気よくがんばってください。