もったいぶってすみませんでした。今年2作目の新作本は、『紙でつくる手塚治虫キャラクターズ』です。

 展開図を8枚収録したブックタイプ。これ1冊で、アトム・レオ・ピノコ・火の鳥 そして ヒョウタンツギの、不滅のキャラクター5体を作ることができます。アトムの完成サイズはおよそ26センチ。これまでにない大きなものになりました。首は自由に回転し、腰とひざは多少位置調整がききますので、皆さんなりのベストポーズを見つけて部屋に飾ってください。ピノコは、組み立てる前に顔と手のパーツを選んで、アッチョンブリケバージョンを作ることもできます。

 誰に口止めされてたわけでもないんですが、何だか言い出すのがもったいなくて・・・、口にした瞬間にこの幸せな夢から覚めてしまうような気がして、今日まで内緒にしてきました。この企画に声をかけていただいた瞬間は、思わずガッツポーズでしたよ。手塚治虫がいかに偉大か、数々の手塚作品によって僕がどれだけ影響を受けてきたか、しゃべり始めるときりがありません。ペーパークラフトの出来には関係ないし、読んでる人にはウザったいだろうので、あんまり多くは語りませんね。
 でもやっぱり少しだけ・・・。

 僕の記憶に強烈に残っている最初の手塚体験は、小学5年生の時に読んだ「火の鳥」です。もちろんそれまでにも手塚漫画はたくさん読んでいたのですが、当時引っ越した小学校の同級生に、ちょっと通な漫画ファンがいて、彼の部屋には朝日ソノラマ版「火の鳥」が全巻(当時)揃っていました。彼に借りて読み進めた「黎明編」「ヤマト編」「宇宙編」「鳳凰編」・・・、それぞれ独立した物語が互いに結びつき、全体を包括する大きな構造が徐々に浮かび上がってくる知的興奮、そしてその物語世界が、手塚治虫という人間一人の頭脳と1本のペンによって生み出されたという事実に、当時の僕はすっかり打ちのめされてしまいました。
 以来、絵を描く職業に漠然とあこがれを抱きつつ、美術とは全く関係のない大学への進学を決めたのも、手塚治虫の著書にあった言葉が決め手になりました。うろ覚えで申し訳ないですが「僕は将来漫画家になりたいと思っています。でも親は、勉強して大学に行けと口やかましく言います。いったいどうすれば良いのでしょうか?」という少年の質問に対して、手塚治虫はこう答えます。「例えばりんごを見て、あぁこれはりんごだなと思うだけの人は、漫画家にはなれません。一つのりんごを見て、そこからいかに想像力を広げ、たくさんの物語やイメージを思い浮かべることができるか、そのためには、漫画を読むだけではなく、多くの本を読み、多くの人と会い、多くの経験をすることが大切です。環境が許すのであれば、今はできるだけ勉強をしてください。漫画家を目指すのは、その後でも決して遅くはありません。」僕は今の仕事に就く前、けっこうな寄り道をしてきてしまいましたが、10代の頃にこの言葉を信じて良かったと今では思っています。

 ああ、やっぱり暑苦しいですね。ペーパークラフトを作るのにこんなゴタクは関係ありませんので、是非気軽に作ってみてください。アトムの顔と頭の切り開き方は、一番苦労した点であり、自分でも気に入っている部分です。頭と顔を組み合わせるのはけっこう難しいのですが、あせらずじっくり根気よくがんばってください。

  
 真っ赤なカバーにドカーンとアトムが目印。値段は税別1400円です。7月20日頃より書店に出回り始める予定ですので、どうぞよろしくお願いします。もちろん紙工房からの通信販売も大歓迎ですよ。調子にのっていっぱい仕入れちゃったし。送料が390円かかってしまいますので、他のキットと合わせて購入された方がお得かもです。

 また、集文社のホームページより、下の「紙でつくる手塚治虫キャラクターズ 専用ディスプレイスタンド」をダウンロードすることができます。こちらも手塚作品から拝借した背景つき、もちろん無料です。せっかく作ったモデルです。かっこよく飾ってあげてくださいね。

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